高齢者や身体機能が低下している方のなかには、嚥下機能が低下している(食べ物の飲み込みが困難な)ケースがあります。
嚥下機能が低下していれば、誤嚥する頻度が増えてしまいます。
つまり「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」になる可能性が高くなります。
誤嚥は嚥下機能の低下だけでなく、食べる姿勢が大きく影響しています。
今回は、「誤嚥しにくい姿勢」と「誤嚥しやすい姿勢」をご紹介していきます。
誤嚥とは?
通常、食べ物や唾液を飲み込めば食道のほうに入っていきます。
しかし嚥下機能が低下している方や姿勢が悪い方などは、食べ物や唾液が食道に入らずに気管のほうに入ってしまいます。(これを誤嚥と言います)
さらに口腔内が不衛生であれば細菌が繁殖しており、その細菌がたくさん付着した食べ物や唾液が気管から肺へと入ってしまうことで、誤嚥性肺炎になります。
誤嚥性肺炎は誤嚥をしたら必ずかかる疾患というわけではなく、体力が落ち免疫力が低下している場合などにかかりやすくなります。
誤嚥性も含めた肺炎は、平成28年度の厚生労働省の死亡率の調査では第三位となっており、脳血管疾患よりも順位が高くなっています。
第一位:悪性新生物
第二位:心疾患
第三位:肺炎
第四位:脳血管疾患
そのため、誤嚥性肺炎は死亡に直結する可能性がある危険な疾患であることがわかります。
誤嚥性肺炎の症状は?
誤嚥性肺炎の症状は、一般的には「発熱」「咳」「痰」「呼吸苦」「肺雑音」です。
しかし、上記のような肺炎の症状が必ずしも出るわけではありません。
誤嚥性肺炎の症状はその他にも、
- 食欲がない
- 元気がない
- 食事時間が長くなる
- ぐったりしている
- ぼーっとしている
- 体重減少
というような症状が出ることも多いので、「何かいつもと違う」と気付けるように、普段からしっかりと患者さんや利用者さんを観察しておくことが大事です。
見過ごしてしまうことで、重症化して手遅れとなってしまわないように注意が必要です。
誤嚥しにくい姿勢と誤嚥しやすい姿勢とは?
誤嚥しにくい姿勢は、「頚部前屈位」がポイントになります。
この「頚部前屈位」とは下顎と頚部の間を3~4横指(指3~4本を横に並べて入る)程度にすると良いと言われています。
誤嚥は食べ物が食道ではなく気管に入ってしまうことを言います。
この誤嚥は、頚部が後屈(後ろに反りかえる)していると起こりやすくなります。
通常食べ物を飲み込む際のメカニズムは、気管への入り口である「喉頭口(こうとうこう)」の前側にある「喉頭蓋(こうとうがい)」という軟骨からなる組織が倒れて喉頭口(気管への入口)に蓋をして、食べ物が気管に入り込むのを防ぎます。
この喉頭口は、頚部を前屈すると狭くなり、後屈すると広くなります。
狭くなった喉頭口には蓋をしやすく、広くなった喉頭口には蓋をしにくくなります。
また気管と食道の位置関係上、頚部を前屈すると食道に入りやすく、後屈すると気管に入りやすくなります。
そのため、頚部を前屈すると誤嚥しにくく、後屈すると誤嚥しやすいのです。
(気道確保をするときには、頚部を後屈します)
健常者でも、頚部を後屈して飲み込みを行うのは難しいです。
このように頚部前屈位が誤嚥予防には重要であることがわかりますが、頚部を前屈するだけでは誤嚥しにくい姿勢とは言えません。
誤嚥しにくい姿勢には、頚部前屈位+正しい食事姿勢がとれているかが大切です。
- 足が浮いていないか
- 下肢の関節が直角に曲がっているか
- 仙骨座りになっていないか
- 体幹が傾いていないか
なども頚部の位置と合わせて評価しておきたいところです。
また、食事介助の方法も介護者が対象者の目線の高さに合わせて座ることやスプーンの出し方などの工夫が必要です。