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医療知識

リハビリで知っておきたいROMの基本とその重要性

医療・福祉の職場で働いていると専門用語が多く飛び交うので、言葉の意味がわからないときがあります。

今回はROMという言葉について、ご紹介していきます。リハビリの職員がいる職場では、見聞きすることが多いかもしれません。

ROMとは何か?

ROMの定義と読み方

ROMとは、関節可動域という意味になります。英語のrange of motionの頭文字をとってROM(アール・オー・エム)と略されています。ROM(ロム)と呼ばれる言葉もありますが、関節可動域の場合では基本的にはROM(アール・オー・エム)で良いと思います。

動物の体内には、たくさんの関節があります。ちなみに人間の体内には、約260コの関節があると言われています。それぞれの関節は、身体を動かしたり、身体を支えるために重要な役割を持っています。

またそれぞれの関節には動く方向があり、生理的に動く範囲があります。この関節の動く範囲が関節可動域です。

理学療法士や作業療法士が、リハビリの計画や訓練を進める際に非常に重要な指標となります。

関節の動きの専門用語(名称)は?人の関節の動きの名称には、専門用語があります。 例えば、「肘を曲げる」は「肘屈曲」になります。 今回は、関節の動きの専門用語...

ROMの重要性

関節可動域、つまりROMは、リハビリや日常生活において非常に重要です。例えば、片麻痺や骨折後の患者さんにとって、関節可動域の評価と管理は、回復のための基本的なステップとなります。

正常なROMを維持することは、日常生活動作をスムーズに行うために不可欠です。関節可動域が低下すると、動作の制限が生じ、日常生活における活動が困難になります。

リハビリによるROM訓練は、この可動域を回復し、維持するために重要です。

ROM制限とは

ROM制限は、関節可動域制限のことです。

人間のそれぞれの関節には、生理的に動く範囲があります。その動く範囲は人によって多少異なる場合もありますが、関節の動く範囲に制限があるかどうかを明確に見つけるためには参考可動域を知っておかなければなりません。

参考可動域は、健常な人が生理的に動かせる関節の角度の指標です。

例えば股関節屈曲(曲げる)の参考可動域角度は125°ですが、100°までしか屈曲出来ない場合、股関節屈曲の可動域制限があることになります。

ただ関節可動域制限があるからといって、必ずしも対象者の問題点になったり、日常生活に支障をきたすわけではありません。

ROMの測定方法

一般的なROM測定法

ROMの測定は、リハビリテーションや医療現場で重要な手順です。一般的な測定法として、関節角度計(ゴニオメーター)を用いて、5度刻みで計測します。

測定は、リハビリ専門職の理学療法士や作業療法士が主に担当します。この方法を用いることで、例えば膝の屈曲や手首の屈曲・伸展などの基準値を把握し、リハビリの進捗を評価します。

ROM-Tとは

ROM-Tの「T」はtestの頭文字になります。ROMは関節可動域、testは測定、つまり関節可動域測定という意味です。

関節可動域測定は、人間のそれぞれの関節可動域の角度をゴニオメーターを使って測定します。評価法のひとつになります。

ROM訓練がもたらす効果

ROMexとは

ROMexの「ex」とは、エクササイズ(exercise)の略です。エクササイズは和訳すると、運動・練習・訓練などの意味合いになります。

ですからROMexとは、関節可動域訓練関節可動域運動のことになります。

ROMexの目的とは

ROMex(関節可動域訓練)の目的は、

関節拘縮の予防・改善
疼痛の緩和
筋短縮の予防・改善
血流改善
肢位や動作の維持・改善
日常生活動作の維持・改善 など

があります。

筋力強化と柔軟性の向上

ROM訓練は、筋力強化と柔軟性の向上に大きく寄与します。関節可動域の訓練は、筋肉や腱の柔軟性を保つだけでなく、筋力を維持するためにも効果的です。

特に、理学療法士や作業療法士の指導のもとで行うことにより、正しい方法で訓練を行うことができるため、リハビリの効果を最大限に引き出します。

筋力強化が達成されると、関節の安定性が向上し、動きやすくなるだけでなく、怪我のリスクを減少させることができます。

日常生活への影響

ROM訓練を継続的に行うことにより、日常生活動作の支障が大幅に軽減されます。

例えば、膝の屈曲や肘の屈曲など、日常生活で頻繁に行う動作がスムーズになるため、生活の質が向上します。

また、関節可動域が改善することにより、片麻痺や骨折後の回復プロセスもスムーズになります。それにより、動作が円滑になるだけでなく、医療費の削減や介護負担の軽減にもつながります。このように、ROMの改善は日常生活への広範な影響をもたらし、より自立した生活を送る基盤となります。

ROMを維持・向上させるために

日常生活での対策

関節可動域(ROM)を維持し、向上させるためには、日常生活での工夫が重要です。まず、定期的なストレッチが効果的です。

特に座りっぱなしや同じ姿勢での作業が多い方は、仕事の合間に体を伸ばすことが、関節の柔軟性を保つ秘訣です。

また、ウォーキングや軽い体操も関節の健康に良い影響を与えます。これらの運動は、片麻痺がある方でも無理のない範囲で実施できます。

さらに、適切な飲水とバランスの取れた栄養摂取も、筋肉や関節の正常な働きをサポートします。日々の生活の中で小さな習慣を見直すことが、ROMの維持に繋がります。

専門家の指導を受ける重要性

ROMを効果的に改善・維持するためには、専門家の指導を受けることが重要です。理学療法士や作業療法士は、それぞれの関節に適したROM訓練やその方法について熟知しており、個々の症状に合わせたプログラムを提供してくれます。

特に、骨折後や脳卒中リハビリなど特別な注意が必要なケースでは、専門家の指導に従うことで安全に訓練を進めることが可能です。

また、関節のROM測定を通じて、訓練の進捗状況や効果を客観的に評価することも、専門家のサポートがあればより正確に行えます。

プロのアドバイスを受けることで、無理なく、しかし着実にROMの改善を図ることができるでしょう。

ABOUT ME
たろ
【資格】理学療法士(15年)、介護職員初任者研修、福祉住環境コーディネーター2級、認知症ライフパートナー 【職歴】大手工場、急性期・回復期病院、デイサービス、老健(非常勤)、訪問リハビリ(非常勤) 【講師実績】イオンにて介護予防の相談会、介護予防対象者向け体操講義、介護福祉士向けの介護講義
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