施設などで機能訓練指導員として働いていると、利用者さんに体力測定を行うことがあります。
とくにデイサービスなどでは、1ヶ月もしくは3ヶ月に1回くらいのペースで体力測定を実施します。
体力測定の項目にはたくさんの種類がありますが、今回は私が実施したことのある高齢者におすすめの体力測定の項目をご紹介していきたいと思います。
はじめに
高齢者を対象とした体力測定を実施する際には、安全性を第一に考える必要があります。特に、普段あまり運動をしない方や体力に自信がない方にとっては、無理のない範囲で楽しめることが重要です。
そのため、測定種目には安全に配慮されたものを選ぶことが求められます。
体力測定とは
一般的な体力測定とは行動体力の機能面を測ることをいい、筋力・筋持久力、敏捷性・スピード、平衡性・協応性、持久力、柔軟性で評価されます。
出典元:高齢者の体力測定|公益財団法人長寿科学振興財団(https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/tairyoku-kiki/tairyoku-sokutei.html)
体力測定を行うことで、
- どこの能力が低下しているかを知る
- どこの能力が優れているかを知る
- 過去の測定数値と比較が出来る
- 数値の目標を立てやすい など
のメリットがあります。
体力測定の重要性
体力測定は、高齢者が自身の体力を把握するだけでなく、運動への関心を持ち、スポーツ活動への参加を促進する重要な要素です。いつでもどこでも簡単に行える体力測定を通じて、高齢者が楽しみながら健康を意識することができます。
高齢者向けの体力測定は、家族や地域コミュニティとの絆を深める場ともなり、参加者同士のコミュニケーションを促進するという点でも重要な役割を果たしています。
高齢者におすすめの体力測定
体力測定の項目にはたくさんの種類がありますが、ここでは高齢者の方にも比較的行いやすいおすすめの項目をご紹介していきます。
握力
上体起こし
長座体前屈
開眼片足立ち
10m障害物歩行
6分間歩行
以上の6項目は、文部科学省に記載されている代表的な体力測定です。(対象年齢は65歳から79歳まで)
実施方法や実施時の注意点などの詳細は、下記の文部科学省のホームページに記載されています。
新体力測定実施要項|文部科学省(http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/stamina/03040901.htm)
本記事では、上記以外の項目の体力測定をご紹介していきます。
TUGテスト
TUGテストは、Timed Up & Go testの略語です。
TUGテストは、
- 立ち上がり
- 歩行
- 方向転換
- 座る
以上の複合的な動作のタイムを計測し、それぞれの動作観察・バランス能力・転倒リスクを評価することが出来ます。
- 椅子
- 方向転換に使用するコーン
- ストップウォッチ
- メジャー(3mを測るため)
- ある程度のスペース
があれば計測出来ます。
TUGテストの詳細につきましては、下記記事をご参考下さい。
FRT
FRTとは、Functional Reach Test (ファンクショナルリーチテスト)の略語で、直訳すると機能的に手が届くテストとなります。
FRTは、壁際に横向きで立ち、壁側の肩を90°挙上して手を真っ直ぐ伸ばした状態から、足の位置を動かさずに出来るだけ手を前に伸ばしていき、そのリーチの長さをメジャーなどで計測するテストです。
FRTは、立位姿勢の動的バランス能力を評価するテストになります。カットオフ値と比較することで転倒リスクを評価することも出来ます。
- 物差しまたはメジャー
- 目印になるシール
- 壁
があれば計測出来ます。
5m歩行テスト
5m歩行テストは、その名前のとおり、5mの歩行のタイムを計測するテストです。カットオフ値と比較することで転倒リスクの評価が出来ます。
通常歩行(普段の歩いている速度)と最大歩行(出来るだけ速く歩いた速度)のタイムを計測します。
5mのスタート・ゴール位置の前後にはそれぞれ3mの距離をもうけなければなりません。ですから5m歩行テストを正式に計測するためには、直線で11mのスペースが必要になります。
- 目印とするテープ
- ストップウォッチ
- メジャー(5mを測るため)
- 11mの直線スペース
があれば計測出来ます。
3m歩行テストや10m歩行テストもあります。
30秒椅子立ち上がりテスト
30秒椅子立ち上がりテストは、30秒間に椅子から何回立ち上がることが出来るかを計測するテストです。30秒椅子立ち上がりテストは、Chair stand-30から『CS-30』と呼ばれることもあります。
立ち上がり動作や着座動作の評価だけでなく、カットオフ値と比較することで転倒リスクの評価をすることが出来ます。
- 椅子
- ストップウォッチ
があれば計測出来ます。
体力測定で楽しみながら健康を意識する
高齢者向けの体力測定は、楽しむことを大切にした種目で構成されており、自然と健康への意識が高まります。
例えば、簡単でシンプルな種目を取り入れることで、高齢者でも無理なく参加でき、一人ひとりの体力に合わせて調整できる柔軟な仕組みです。また、レクリエーションの要素を加えることで、参加者同士が競争心を持ちつつ、和やかな雰囲気で取り組むことができます。
このような体力測定イベントは認知機能の刺激にもつながり、高齢者の心に活力を与えます。さらに持続的な関心を引き出すために、デイサービスやサ高住といった高齢者施設で定期的にイベントを企画し、日常的に健康を意識する習慣づくりを支援しています。
このように、体力測定を通して、楽しさと健康づくりを両立する方法が、高齢者の生活に新たなエネルギーを提供しています。
まとめ
今後の展望と課題
高齢者の体力測定は、単なる健康チェックにとどまらず、彼らの生活の質を向上させる重要な役割を果たしています。多くの高齢者向けデイサービスなどで採用されています。
このような体力測定は、楽しい体力づくりの一環として、多くの高齢者に楽しんで参加してもらうことが大切です。
しかし、体力測定を円滑に進める上での課題も存在します。例えば、安全面の配慮や個々の健康状態に応じた測定方法の選定は、専門的な知識が必要です。高齢者が安全に、そして楽しみながら体力測定に取り組むことができる環境を整えることが必要です。
最終的に、体力測定を通じて高齢者自身が自身の健康状態を理解し、日常生活の活力を高めることができれば、その効果は計り知れないものとなります。