高齢になると下肢の筋力や体力が低下して、転倒のリスクが高くなります。
そのうえ、骨粗鬆症などで骨が弱くなっていることが多いため、高齢者が転倒すると高い確率で骨折してしまいます。
転倒の仕方にもよりますが、高齢者にとって骨折しやすい部位があります。
今回は、高齢者に多い骨折についてご紹介します。
骨折とは
まず骨折について。
骨が壊れることを骨折と言います。したがって、ヒビも骨折ですし、骨の一部分が欠けたり、凹んだ場合も骨折です。
骨折は骨に力がかかって発生します。健康な骨では、かなり大きな力がかからないと骨折しません。
出典元:骨折|日本整形外科学会(https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/bone_fracture.html)
健康な骨であればそう簡単には折れないのですが、高齢になると骨が弱くなっていることが多く、少しの外力が加わるだけでも骨が折れてしまうことがあります。
高齢者の骨折が多い原因
高齢者の骨折が多い原因として、加齢に伴う骨粗しょう症が挙げられます。骨粗しょう症では骨の密度や強度が低下し、わずかな衝撃でも骨折を起こしやすくなります。
また、運動不足や筋力低下も骨折と密接に関連しています。特に下半身の筋力低下によりバランスを崩しやすくなり、転倒のリスクが増加します。
骨折の分類と確認方法については、下記記事をご参考ください。

高齢者が骨折しやすい部位

高齢者は加齢とともに骨の強度が低下するため、骨折のリスクが高まります。特に骨粗しょう症になると、わずかな衝撃でも骨折しやすくなり、注意が必要です。ここでは、高齢者が特に骨折しやすい部位をご紹介します。
脊椎(胸腰椎)圧迫骨折
脊椎圧迫骨折は、高齢者の方に最も多いと言われています。いわゆる背骨の骨折です。
脊椎圧迫骨折は、下記のようなときによく起こります。
- 尻もちをついたとき
- 勢いよく座ったとき
- 激しい咳やくしゃみをしたとき
- 重い物を持ったとき
- 背中を押されたとき など
脊椎圧迫骨折は、背骨が潰れるように変形してしまう骨折です。転倒だけが原因ではなく咳やくしゃみでも起こりうるので、骨折する心当たりがなくてもいつの間にか骨が折れていたということがあります。
基本的には、骨折をすると激しい痛みが出現しますが、高齢者の方のなかには骨折していることに気づかない人もいます。また、姿勢が悪くなり前かがみになりやすくなります。早期発見と適切な治療が重要です。
上腕骨頸部骨折
上腕骨頸部骨折は、上腕骨の近位端(肩側)の骨折になります。
上腕骨頸部骨折は、下記のような転倒をしたときによく起こります。
- 勢いよく手や肘をついたとき
- 肩をぶつけたとき など
手をついて転倒したときには、橈骨遠位端と合わせて骨折している人もいます。
この部分の骨折も治療に時間がかかり、肩や腕の可動範囲が狭くなることがあります。機能回復のために適切なリハビリが求められます。
橈骨遠位端骨折
橈骨遠位端骨折は、前腕にある橈骨(母指側の骨)の手首付近の骨折になります。
橈骨遠位端骨折は、下記のような転倒をしたときによく起こります。
- 勢いよく手をついたとき など
ちなみに手のひらをついて転倒したときはコーレス骨折、手の甲をついて転倒したときはスミス骨折が起こりやすくなります。
高齢者には比較的よく見られる骨折であり、外力に弱くなる骨粗しょう症の影響を受けやすい箇所です。この骨折は日常生活の動作、特に手を使う作業や食事動作に影響を及ぼすため、早めの治療とリハビリが必要です。
大腿骨頸部骨折
大腿骨頸部骨折は、大腿骨の近位端(股関節側)の骨折になります。
大腿骨頸部骨折は、下記のような転倒をしたときによく起こります。
- 太腿をぶつけたとき
- 下肢をひねったとき など
下肢の骨折では、歩行が困難になることが多く、寝たきりになり筋力や体力がどんどんと衰えてしまいます。
大腿骨頸部骨折では、人工骨やボルトなどの手術をすることが多く、術後は早期からリハビリを開始します。
大腿骨近位部骨折は、高齢者に最も多く見られる骨折の一つです。この部位は太ももの付け根部分で、転倒した際に体重が集中しやすいため骨折が起こりやすくなります。
高齢者が骨折をすると重症化する!?
骨折をすると、強い痛みが続くだけでなく日常動作にも制限をきたします。
高齢者が骨折をすると、もともと筋力が弱いため動作制限が顕著に現れます。そのためベッド上での生活が増え、廃用性が進んでしまいます。
ベッド上で寝たきりになると骨折部位周辺の機能障害だけでなく、全身の筋力低下や心機能の低下、認知機能の低下、起立性低血圧など、様々な症状が起こりうります。
そのため高齢者の骨折後の生活には、特に注意が必要です。
骨折を防ぐための転倒予防策
普段の生活での注意点
高齢者にとって転倒を防ぐためには日常生活の中でさまざまな注意が必要です。まず、室内外で段差を見落とさないように気を配ることが大切です。特に、急いで動こうとする際や暗い場所では注意力が散漫になりがちですので、できるだけゆっくりとした動作を心がけましょう。
また、疲労が溜まっているときや調子が良くないときには無理な動きを避けることも重要です。骨折のリスクを減らすためにも、骨粗しょう症対策を含んだバランスの良い食事や、適度な運動も合わせて生活に取り入れましょう。
高齢者におすすめの室内環境の整え方
高齢者が安心して暮らせる室内環境を整えることは、骨折の予防には欠かせないポイントです。まず、転倒の原因となる不要な物は片付けて、床を常にすっきりさせておきましょう。また、滑りやすいフローリングには滑り止めマットを敷くことで安全性を高めることができます。
階段や廊下には手すりを設置し、トイレや浴室には転倒を防ぐための補助具を導入するのもおすすめです。照明も十分に明るくして、特に夜間の移動をスムーズにすることが大切です。これらの工夫を取り入れることで、転倒リスクを大幅に減らすことができます。
バランストレーニングと筋力トレーニング
骨折を防ぐためには、体のバランス能力を鍛えるバランストレーニングや筋力トレーニングを取り入れることが効果的です。簡単にできる方法として、椅子や壁に手をついて片足立ちをする訓練があります。これにより足の裏の筋力が向上し、バランス感覚が養われます。
また、筋力を鍛えるために軽いスクワットや、階段昇降運動を日常に取り入れるのもおすすめです。無理をしない範囲で、少しずつでも継続することが骨折予防に繋がります。
転倒しやすい季節・状況別の対策
転倒しやすい季節や状況を意識することも、高齢者の骨折予防に役立ちます。特に冬場は路面が凍結したり、室内外の温度差で動きが鈍くなったりすることが多いため、外出時には滑りにくい靴を使いましょう。
雨の日には地面が滑りやすくなるため、移動時に杖や傘を適切に使いながら慎重に歩行することが重要です。また、浴室での転倒もよくあるため、濡れた床に滑り止めマットを敷いたり、手すりを設置するなど状況に応じた対策を講じましょう。これらの工夫が骨折リスクを減らす大きな助けになります。
おわりに
高齢者に多い骨折箇所をわかりやすく言うと、「背中・肩のつけね・手首・股関節のつけね」になります。
高齢になってから転倒をすると、骨折をする確率は非常に高くなってしまいます。
骨折をすると激しい痛みが続くだけでなく拘縮や筋力低下が起こり、日常生活にも支障をきたします。最悪の場合、寝たきりになってしまいます。
少しでも転倒に不安がある方は、油断や無理をせず、必要に応じて付き添いや介助をしてもらい、安全第一に生活をおくることが大切です。