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医療機器·器具

レッドコードで始める!高齢者向け転倒予防エクササイズの魅力

高齢者施設では、集団体操をおこなっている所が多くあります。集団体操は対象の人数が増えるほど定着が難しく、継続することが難しくなります。

音楽を流して曲に合わせたり、DVDを見ながら身体を動かしたり、タオルやペットボトルなどを利用したりと、様々な方法で集団体操をおこなっています。

近年では、レッドコードを使って体操や筋トレをしている施設が増えています。

レッドコードとは、どんなものなのでしょうか。

今回は、レッドコードについてご紹介していきます。

レッドコードとは

レッドコードとは、北欧のノルウェーで開発者されたトレーニング器具です。天井から吊るされた赤色のロープで運動を行います。

スリングエクササイズセラピーになります。

レッドコードを使用することで、筋力増強やリラクゼーション、ストレッチなどの効果を得ることが出来ます。関節や筋肉に過度な負担をかけずに全身運動が可能である点が特長です。

ロープの長さや使い方を調整することで、利用者の身体状況や目標に応じたオーダーメイド感覚の運動を提供できます。また、不安定な動きを利用して身体のバランスや安定性を向上させる仕組みを持っており、特に転倒予防に効果的です。

最近では、病院やジムだけでなくデイサービスなどでレッドコードを使用している所が増えてきているようです。

スリングエクササイズセラピーとは

スリングエクササイズセラピーとは、一体どういうものなのか。

スリングエクササイズセラピーは英語で『Sling Exercise Therapy(S-E-T)』と書きます。

Sling(スリング)とは、『吊る』や『ロープなどの吊り用具』という意味があります。

Therapy(セラピー)とは、『療法』や『治療』などの意味があります。

スリングエクササイズセラピーは、吊るされたロープを使い、身体の免荷やロープの不安定性をいかしたトレーニングが出来る運動療法です。

レッドコードの対象者

レッドコードの対象者は、

  • 高齢者
  • 障害がある方
  • プロスポーツ選手 など

介護予防・転倒予防やプロのトレーニングに積極的に利用されていますが、健常者の健康増進やダイエットなどのエクササイズにも利用されています。

レッドコードは個人で行うだけでなく、集団で行うことも出来ます。

レッドコードを使う肢位

レッドコードは、使用する対象者の必要性によって立位・座位・臥位など、あらゆる体位でエクササイズを行うことが出来ます。

デイサービスなどではレッドコードを座位で使用して、集団で体操をおこなっている光景をよく見かけます。

高齢者に適したレッドコードの利用法

高齢者向けのレッドコードエクササイズは、座位や立位で安全に行える運動が中心となります。例えば、ロープを握りながら段差昇降を行うメニューは、転倒リスクを軽減しながら下肢筋力を強化します。

また、座位でのバランス訓練は、不安定な状況でも体を支える能力を養成できます。このように、日常生活の中での転倒リスクを減らす目的で活用されることが多く、高齢者の自立支援にもつながります。

レッドコードの特徴

レッドコードは、現在世界20ヵ国以上で使用されています。

人気があるリハビリ器具であることは間違い無いのですが、どんな特徴があるのか。見ていきましょう。

負荷を調整出来る

レッドコードは使用方法が多種多様で、負荷無しでリラクゼーション効果、負荷をつけて筋力増強の効果を発揮させることなどが出来ます。

低負荷であれば高齢者や虚弱対質者に、高負荷であれば健常者やプロスポーツ選手にも対応することが出来ます。

そのため、対象者に合った負荷レベルに調整することが可能です。

あらゆる部位のエクササイズが可能

レッドコードは、頚部・体幹・上肢・下肢などあるゆる部位のエクササイズが可能です。

スリングには、頸椎用・腰椎用・上下肢用・把手用などがあります。

セラピストの負担軽減

リハビリ時にレッドコードを使用することで、対象者だけでなくセラピストの負担軽減にも繋がります。

  • 無理な態勢にならなくて良い
  • 両手を自由に使える など

セラピストにも優しいのがレッドコードの特徴でもあります。患者さんにリハビリをおこなって、セラピストである自分が痛みに苦しんでしまっては大変です。

セラピストが無理な態勢をとり続けていると、腰や膝を痛めるだけでなく、対象者にもそこから緊張が伝わってしまいます。

転倒予防に特化したエクササイズのメカニズム

転倒予防で鍛えるべき筋肉グループ

高齢者が転倒を予防するためには、特定の筋肉グループを重点的に鍛えることが重要です。具体的には、下肢の筋肉である大腿四頭筋やハムストリングス、さらにはふくらはぎの腓腹筋などが挙げられます。

これらの筋肉は歩行や立位の安定性に関わり、強化することで日常動作の安定性が向上します。また、体幹の筋肉である腹直筋や脊柱起立筋も重要で、これらを強化することでバランス感覚と姿勢を保つ能力が向上します。

レッドコードを使った具体的な運動例

レッドコードによるエクササイズは、高齢者に適した手軽で効果的な運動方法の一つです。例えば、座位で行う「スクワットサポートエクササイズ」では、レッドコードを握りながら少しずつ立ち上がる運動が可能です。

これにより、下肢筋力を鍛えつつ転倒の危険を最小限に抑えられます。また、「バランス向上エクササイズ」では、不安定な座面に座りながらコアマッスルを意識して体を支えることで、座位バランスと体幹を強化できます。これらのメニューは利用者一人ひとりの体力レベルに応じて調整可能で、安全性が高いのも魅力です。

高齢者の体への優しさを追求した設計

関節に負担をかけない動作の工夫

レッドコードを使用したエクササイズは、高齢者の関節に優しい設計が特徴です。柔らかい動きを重視したトレーニングは、関節可動域の維持・改善に役立ち、転倒予防にも大きな効果を発揮します。

介護現場でも導入される理由

レッドコードが介護現場で多く利用されるのは、その柔軟な運動メニューの対応力と安全性にあります。高齢者は立位や座位、場合によっては寝た状態でもエクササイズが可能なため、利用者一人ひとりの身体能力や健康状態に合わせて運動を実施できます。

さらに、レッドコードは体を支える機能があるため、バランス能力が低下している利用者でも恐怖心を抱かずに運動に取り組むことができます。施設ではこれを活用したリハビリやグループエクササイズが行われ、利用者の転倒リスク軽減と心身の健康維持に役立っています。

安全性の高い練習環境の作り方

レッドコードを活用した練習環境を作る際には、安全性を確保するための工夫が求められます。まず、器具の天井取り付け部分やロープの状態を定期的に確認・点検することが重要です。

また、使用するスペースは広めに確保し、周囲に障害物がないように整備します。バランスクッションや床マットを併用することで、転倒時の衝撃を軽減しながらバランス力向上の効果を高めることができます。

さらに、初めて導入する場合は、専門の指導者や理学療法士によるサポートを受けることで、安全かつ適切なエクササイズが行える環境を整えられるでしょう。

認知症予防や心身の健康への効果

脳トレーニングとしての活用法

レッドコードは、高齢者にとって効果的な脳トレーニングツールとしても注目されています。エクササイズではロープの動きをコントロールしたり、バランスを保つ動作を行うため、これが脳の運動制御能力を活性化させます。

特に、動作と認知機能を同時に鍛えることで、認知症予防につながる効果が期待されています。

心肺機能の向上と持久力アップ

レッドコードエクササイズは全身を使った運動ができるため、高齢者の心肺機能向上にもつながります。負荷を細かく調整できる特徴から、無理なく持久力を鍛える運動メニューが可能です。心拍数を穏やかに上げることで、体をゆっくりと慣らしながら継続できるプログラムを提供できます。

高齢者施設では、座位や立位で行える運動を取り入れ、利用者の体力に応じたプランで心肺機能と全身の活性化を図っています。

継続することで得られる精神的効果

レッドコードを使ったエクササイズを継続的に行うことで、身体的なメリットだけでなく、精神的な効果も得られると言われています。運動を行うとリフレッシュ感や達成感を得られ、ストレス緩和や気分の安定にもつながります。

また、グループエクササイズとして実施されるケースも多く、他の参加者とのコミュニケーションを通じて社会的なつながりを感じることが可能です。これにより、孤立感の解消や精神的な充足感が得られ、高齢者の生活の質が向上します。

ご家庭でも取り組める!おすすめ簡易プログラム

必要な機材とスペース

レッドコードを使ったエクササイズを家庭で行うために必要な機材は、まず天井や専用のスタンドに取り付けるためのレッドコード本体です。

この器具は、天井への固定が可能かどうか確認した上で購入することをおすすめします。また、身体を支えるための柔らかいマットや、バランスクッションを準備するとさらに運動の効果を高めることができます。

スペースについては、身体を動かしても周囲に物がない安全な場所を確保しましょう。広さとしては、約2畳分のスペースがあれば座位や立位でのエクササイズを十分に楽しむことができます。運動中は滑りやすい床面にも注意し、必要に応じて滑り止めマットを用いると安心です。

初めての方向け3ステッププログラム

レッドコードを始める方のために、簡単に取り組める3つのステップをご紹介します。このプログラムでは、高齢者向けの運動を含む安全で効果的なメニューを取り入れています。

ステップ1:軽い座位エクササイズ

まずは椅子やバランスクッションを使って座位で行える軽い運動からスタートします。レッドコードを使い、腕を軽く引いたり、足をゆっくり持ち上げたりすることで、筋力やバランス感覚を少しずつ向上させます。

 

ステップ2:立位での姿勢安定トレーニング

座位が安定してきたら、レッドコードを利用して立位でのエクササイズに進みます。コードを握りながら、片足立ちや軽い体のひねりを行うことで、バランス力を鍛えることができます。この動きは転倒予防にも非常に効果的です。

 

ステップ3:全身を使った動作

最後に、全身を使う運動に挑戦しましょう。たとえば、コードを引きながらスクワットやゆっくりとした体幹のひねり運動を行います。この段階では、心肺機能や持久力の向上も期待できます。

家族も一緒に楽しむエクササイズ

レッドコードを使ったエクササイズは、家族全員が一緒に取り組むことも可能です。高齢者と子ども、または家族で一緒に行うことで、日々の交流を深め、楽しいひとときを共有する機会にもなります。

おすすめの共通メニューは、コードを使った軽い引っ張り合い運動や、一緒にペアになって行うストレッチです。これは、相手に合わせた動きが求められるため、自然とコミュニケーションが生まれやすくなります。また、家族で行うことにより運動へのモチベーションも高まり、継続に繋がります。

さらに、ご家庭で楽しみながら実践できるエクササイズ動画を活用したり、専門家が紹介するメニューを参考にすると新しい刺激が加わりやすいです。

専門家の見解と利用者の声

理学療法士がすすめるレッドコードの魅力

理学療法士の間では、レッドコードは高齢者にとって非常に有益なエクササイズツールとして高く評価されています。

その魅力の一つは、個々の身体状況に合わせて運動メニューを柔軟に調整できる点です。天井から吊るされたロープを使用することで、関節への負担を軽減しながら、安全に筋力やバランス能力を向上させることができます。

また、必要に応じて負荷を微調整できるため、体力が低下している方や運動初心者でも安心して取り組むことが可能です。そのため、理学療法士はレッドコードを転倒予防や体力維持のためのプログラムに積極的に取り入れています。

利用者が語るエクササイズ後の変化

レッドコードエクササイズを実践した高齢者の多くは、運動に対する前向きな変化を実感しています。「立ち上がりやすくなった」「歩行が安定した」といった声がよく聞かれます。また、自分のペースで無理なく進められる点も大きな魅力のようです。

特に転倒予防に特化したメニューでは、筋力やバランス能力の向上に加え、自己効力感の向上や精神的な安定を得ているケースも見られます。さらに、エクササイズ後には身体が軽く感じるといった感覚の変化が得られることもあり、多くの利用者が継続したいと考えています。

介護施設での事例紹介

介護施設では、レッドコードを活用したグループエクササイズが広く実施されています。このプログラムは利用者の筋力やバランス能力を向上させるだけでなく、介護予防や実際の介護負担軽減にもつながっています。

ある施設では、利用者の状態を事前に評価し、それぞれに適したオーダーメイドの運動メニューを提供しています。また、グループで行うことによる孤立感の解消やコミュニケーション機会の提供も目的とされています。

施設スタッフからは、「レッドコードを導入してから利用者の転倒リスクが減少した」という報告も寄せられています。こうした成功事例から、介護現場においてレッドコードはますます注目を集めています。

まとめ

レッドコードは、使用する対象者だけでなくセラピスト自身の負担軽減にもなります。

負荷レベルを変えることが出来たり、多種多様の使用方法があるので、個人の能力に合わせてトレーニングが出来ます。

また、レッドコードは集団でも使用出来るため、デイサービスでも非常に人気です。

ABOUT ME
たろ
【資格】理学療法士(15年)、介護職員初任者研修、福祉住環境コーディネーター2級、認知症ライフパートナー 【職歴】大手工場、急性期・回復期病院、デイサービス、老健(非常勤)、訪問リハビリ(非常勤) 【講師実績】イオンにて介護予防の相談会、介護予防対象者向け体操講義、介護福祉士向けの介護講義
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