握力計の正しい測り方|初心者でもわかるステップとコツ
「握力(あくりょく)」を測ることは、健診・スポーツ・リハビリテーションなどで自分の体力・筋力を数値で把握するうえでとても有効です。
握力計を使った握力測定は簡易的かつ時間をかけずに計測することが出来るので非常に測定しやすいテストのひとつです。
そのため、体力測定で握力測定を実施するところは多いです。
しかし、測定の仕方を間違えてしまうと数値が大きく異なるどころか、全く意味のないテストとなってしまう場合があります。
ここでは、握力計の測り方をステップバイステップで解説し、注意点やコツもあわせて紹介します。
握力とは何か
握力とは、手や前腕の筋肉を使って「ものを握る力」のこと。医学・スポーツの分野では、握力は以下のような意味を持ちます。
- 身体全体の筋力や体力の指標になる
- 高齢者のサルコペニア(筋肉減少症)の早期発見に使われる
- スポーツ選手のパワー発揮力や競技力の一要素として重視される
握力で使う筋肉には、主に下記のような前腕にある筋肉が中心となります。
- 浅指屈筋
- 深指屈筋
- 長母指屈筋 など
握力計とは
握力計は、手を握る力(握力)を計測する測定器です。
握力計さえあれば場所を問わずどこにいても、簡単に握力を計測することが出来ます。
握力測定は単に手の力を計測出来るだけでなく、全身の身体機能や転倒リスクの指標を知る上でも重要なテストになります。
握力計の種類
握力計には油圧式・空気圧式・コラン式・ロードセル式など様々な種類がありますが、一般的によく見かけるのはスメドレー式(バネ式)という測定器になります。
スメドレー式は、バネの反発で握る力を測ります。比較的安価で、構造が簡単です。デメリットとしてはバネ疲労やずれが出ることがあります。
また、握力計にはデジタル式とアナログ式があります。デジタル式のほうが液晶画面で数値を読み取りやすいですが、電池が必要となります。また耐久性や故障時にも注意が必要です。
アナログ式は針と目盛りで表示される為、電源不要です。非常にシンプルですが読み取りで誤差が出ることがあります。
測定の準備
測定を正確に行うための準備はとても大切です。次の点を確認しておきましょう。
- 握力計本体の状態確認(デジタルなら電池残量、表示の異常など)
- 手の状態を整える(汗を拭く、手を洗う、油分を取り除く)
- 筋肉・身体をリラックスさせる程度の休養を取る
- 測定前に軽くストレッチなどで手・前腕をほぐす
- 握る幅(グリップの幅)を調整できるタイプなら、自分の手に合うように調整する
正しい測定手順
厚生労働省や各種体力測定ガイドラインに準拠した標準的な手順はこちらです。
1. 姿勢
直立(立って)するのが基本となります。両足は肩幅くらいに開き、体の重心を安定させます。
腕は自然に身体の横に下げ、余計な力を入れずリラックスします。
立位が保持出来ない方は、椅子に座った姿勢で行いますが、ひじ掛けなどがある椅子では上肢を下ろす際や計測時に接触してしまい邪魔になる可能性があります。
身体能力が低く、座位や臥位で測定する場合には、特記事項にその肢位も書いておくと次回測定する際にわかりやすいです。
計測時は大きく身体を動かさずに、測定肢位をなるべく保ったまま力を入れてもらいます。
高齢者におすすめの体力測定については、下記記事に記載しています。
2. グリップの調整
握力計の握り方が毎回計測するたびに異なってしまっては、正確な数値の比較が出来ません。
そのため、正しい握り方で統一しておく必要があります。
握力計の握り方のポイントとしては、
- 握力計の表側(数値が出る側)が外側になるように握る
- 母指と四指で握力計を握り、人差し指の第二関節(PIP関節)が約90度(直角)になるように握る幅を調節する
握る幅が広すぎると第二関節が鈍角になりますし、狭すぎると鋭角になります。必ず直角にしましょう。
3. 測定方法
握る動作は一気に力を入れて最大握力を発揮します。力を徐々に入れていくのではなく、「今!最大!」という意識で行います。
約3秒間保持するタイプが多いです。
4. 回数と順序
右手・左手どちらも測定します。交互に2回ずつ行うのが推奨されています。
各試行の間には短い休憩(30秒~1分程度)を入れて疲労の影響を減らします。
5. 記録
記録はキログラム単位が基本となります。キログラム未満は四捨五入または切り捨て・四捨五入のルールを決めて一貫させます。
左右それぞれの良い方の記録を採用します。両手の平均を出すケースもあります。
測定時の注意点・よくある誤り
正しく測るには気を付けたいポイントがあります。以下の誤りを避けることで、測定精度と信頼性が高まります。
握力計を身体や衣服に接触させない:衣服や体に当たると力が逃げたり、杖のように支点ができ誤差が出てしまいます。
手首の角度が一定でない:手首を過度に反らせる・曲げる 手首の位置で握力が大きく変わることが研究で示されており、正式な測定では「自然に下げた腕」など肢位が決まっています。
握力計を振り回したり揺らしたりする:握力の測定では静的な力を測るので、動きが入ると記録が不正確になってしまいます。
測定間隔を空けずに連続して行う:筋疲労が累積して握力が落ちるため、適切な休憩を入れることが重要です。
手が濡れていたり汗・油で滑る状態:グリップ力が低下し、正しく力を伝えられません。
測定結果の見方・平均値との比較
測定が終わったら、その値をどう解釈するかも重要です。
年齢・性別ごとの握力平均値と比べる
日本の公的な体力・運動能力調査には、年齢・性別別の平均握力データがあります。あなたの値が平均より上か下かを調べることで、自分の筋力状態がどのあたりか分かります。
「握力の平均値」について、日本国内のデータを中心に男女・年齢別に整理してみます。参考文献は主に文部科学省の体力・運動能力調査などです。もし別国のデータがよければ、それも探せます。
以下は、令和5年度(最近)の調査・報告からの握力の平均値です。
- 20~24歳:男性約44.1 kg 女性約26.84 kg
- 25~29歳:男性約45.60 kg 女性約27.66 kg
- 30~34歳:男性約45.67 kg 女性約27.78 kg
- 35~39歳:男性約46.28 kg 女性約28.13 kg
- 40~44歳:男性約45.78 kg 女性約28.16 kg
- 45~49歳:男性約45.30 kg 女性約27.84 kg
- 50~54歳:男性約44.31 kg 女性約27.05 kg
- 55~59歳:男性約43.41 kg 女性約26.78 kg
- 60~64歳:男性約41.94 kg 女性約26.08 kg
- 65~69歳:男性約39.36 kg 女性約25.08 kg
- 70~74歳:男性約37.50 kg 女性約23.75 kg
- 75~79歳:男性約35.07 kg 女性約22.80 kg
男性はおおむね 30~39 歳あたりでピークとなる握力(約 45~47 kg 前後)を示します。
女性は 30~44 歳あたりがピーク(約 28~29kg 前後)で、その後緩やかに低下します。
高齢になるほど握力の低下が明らかで、70~79 歳代では男性は約 35kg、女性は約 23kg 前後になる傾向があります。
また、60 歳以上高齢者についてまとめたメタ分析では、男性で平均 33.11 kg、女性で 20.92 kg とするデータもあります(ただし「日常生活動作が自立している高齢者」など条件が限定されています)
左右差を確認する
利き手の方が強いのが普通ですが、差が大きすぎると筋力バランスの偏りなどを示している可能性があります。
過去の自分の測定値との比較
トレーニングや生活習慣の変化が握力にどう影響しているかを追うために定期的に測ることが効果的です。
測定精度を上げるコツ
より正確な握力測定を行うための工夫をいくつか紹介します。
1. 測定時間帯を一定にする
朝 vs 夜で体の状態が違うため、毎回同じ時間帯(たとえば午前中)に測るとバラツキが小さくなります。
2. ウォーミングアップをする
軽いストレッチや手指・前腕をほぐす運動を先に行うことで、力を発揮しやすくなります。
3. 測定前に呼吸を整えておく
息を止めない、力を入れるときに吐くなど、呼吸を意識すると力が入りやすくなります。
4. 手首を“軽く手の甲側に反らせる”調整(ただし正式な測定では肢位を固定)
研究では、手首を多少手の甲側に反らせた方が握力が出るという報告もあります。
ただし、公的・公式な測定(体力測定・健診など)の場合はガイドラインに従うことが最優先となります。
5. 記録を複数回取って平均を出す
2回・3回測定して「良い方」または「平均」を取ることで、ばらつきのある値を安定させます。
まとめ
- 握力は健康・スポーツ両面で重要な指標
- 測定前に準備を整え、正しい姿勢・肢位で測ることが肝心
- 測定は左右両方で、交互に、休憩を入れながら行う
- 測定結果は平均値との比較・自分の変化を追うことで意味が出てくる
握力測定は、簡単に測定出来る体力測定のひとつです。
しかし、測定する際には握力計の握り方や肢位をきちんと統一しておかなければ、握力の数値が大きく変わってしまう場合があるので注意が必要です。

