介護の現場では、「身体のポジショニング」が利用者の快適さ、安全、そして合併症予防に直結する重要なケアです。本記事では、実務にもすぐ役立つ内容を丁寧に解説します。

 

身体のポジショニングとは?定義と対象

「ポジショニング」とは、身体機能が低下して自力で姿勢維持が難しい方に対して、クッションなどを使い、安全かつ快適な姿勢を保つケアを指します。

日本褥瘡学会による定義では、「身体各部の相対的な位置関係を設定し、目的に適した姿勢を保持すること」とされています。

対象は、寝返りが難しい方、車椅子で長時間過ごす方、麻痺・拘縮・呼吸や嚥下に課題がある方などです。介護士を中心に、理学療法士や看護師がチームで関わります。

 

ポジショニングの目的と効果

身体のポジショニングには、以下のような目的と効果があります。

  • 褥瘡(床ずれ)の予防:体圧を分散し、特定部位への圧迫を軽減。
  • 関節拘縮の予防・改善:関節を良肢位で保つことで可動域を維持。
  • 呼吸・循環機能の維持:肺や横隔膜への負荷を軽減し、呼吸が楽に。
  • 嚥下(飲み込み)の安全確保:誤嚥防止のため、適切な頭部・体の角度を保持。
  • 精神的な安定・生活の質(QOL)向上:快適な姿勢が精神面の安定にも寄与。

これらにより、利用者本人の快適さだけでなく介護職の負担軽減にもつながります。

 

実践の基本:体軸・すき間・重力の考え方

体軸を整える

肩と腰骨を結ぶラインが平行、背骨は垂直であることを意識。

体軸が整うことで、身体の一部に過剰負荷がかかるのを防ぎます。

 

身体とベッド・椅子のすき間を埋める

足首や腰などのすき間にクッションを入れ、面全体で支えることで体圧を分散。

ただし、クッションの挿入位置や深さを誤ると新たな圧負荷や疲労を招くため注意。

 

重力の影響を考慮する

足先と骨盤の高さをそろえることで重力の偏りを防ぎ、楽な姿勢を維持。

 

注意すべきポイントとリスク回避

急な動きや力技は禁物

利用者の筋緊張・拘縮に配慮し、ゆっくり丁寧に実施。

声かけ・確認

動作前後に「これから動かします」「痛みないですか?」など、声かけで安心感を。

体位変換の頻度

原則2~4時間ごとに体位を変える。褥瘡・血行障害・呼吸困難がある場合はさらに頻度を高める。

摩擦(ずれ力)の軽減

「背抜き」を行うことで、肌への摩擦を減らし褥瘡リスクを軽減。

個人差への配慮

拘縮や変形がある関節には無理に動かさず、良肢位に合わせたクッション配置を。

 

ダメなポジショニングになる原因

身体のポジショニングは、その対象者に100%正解のポジショニングをつくることは難しいことです。

それには技術・知識・経験・道具が必要になるからです。

しかし反対に、ダメな(良くない)ポジショニングをつくることは簡単ですし発見しやすいのです。

私が今まで働いてきた介護現場で多かった、介護者のダメなポジショニングになる原因をご紹介します。

 

ポジショニングの目的を理解していない

まず私が感じたことは、ポジショニングの目的を理解していない介護者がいるということです。

介護者がポジショニングの目的を理解していなければ、写真でポジショニング例を作っていたとしても、クッションの入れる位置などを写真通りに見よう見真似でポジショニングをしたところで結局ズレが生じてしまいます。

その為、意図しない位置にクッションが入ってしまい結果的に拘縮や褥瘡を助長するようなポジショニングとなってしまっている場合があります。

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例として、仙骨部の圧を分散させるためにポジショニングクッションを入れるようにしていても、その目的を理解していない介護者が見よう見真似でポジショニングを行えばクッションの入れる位置が少しズレて、余計に仙骨部に圧がかかってしまっているということがあります。

つまりポジショニングの目的を理解していない介護者と、その目的を理解している介護者のポジショニングでは、見た目こそ似てはいますが内容が全く異なっていることが多いのです。

 

ポジショニングの必要性を理解していない

次に私が感じたことは、ポジショニングの必要性を理解していない介護者がいるということです。

ポジショニングを行わないからといって、すぐに拘縮や褥瘡が発生するわけではありません。

その為ポジショニングを行うことは、介護者によっては優先順位が低くなってしまっている場合があります。

人員が少ない介護施設では特に、時間に追われる職員が多く、優先順位を低く考えているポジショニングは二の次・三の次になってしまい、結局時間が無くてポジショニングが出来ていないということが起こります。

ポジショニングは毎日継続することが大切なので、時間があるときだけポジショニングを行い、時間が無いときにはポジショニングを行わないということになってしまってはいけません。

ポジショニングを行わなければ絶対に、「拘縮が進行する」、「褥瘡が発生する」などと、常に危機感を持ちその必要性を感じながらポジショニングを行うことが大切です。

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チームで情報を共有し、安定的なケアを実現

利用者ごとにポジショニング方法を共有することは重要です。

たとえば、ポスターやシートに「使用するクッション」「配置場所」「注意点」を写真付きで貼るなど、誰でも同じ対応ができる工夫が効果的です。

アセスメントの結果や拘縮位置・頻度など、チーム共有を通じてケアの質を高めましょう。

ポジショニングは、「本当にこの方法で合っているのか」というようになかなか正解を導きにくいものでもあります。

ポジショニングの方法がわからない場合には、半信半疑のままポジショニングを行わずに先輩や専門職に相談して、目的と必要性を理解した上でポジショニングを行いましょう。

万が一、拘縮や褥瘡が発生してしまえば、自分たちの責任にもなりえてしまうのです。

まとめ:QOL向上へつながるポジショニングの実践

大切なポイント

  1. 体軸の整備 肩・腰・背骨の位置を意識し、負荷を分散
  2. すき間埋め 面で支える配置で体圧分散
  3. 重力配慮 足先と骨盤の高さをそろえる
  4. 姿勢別工夫 仰臥位・側臥位・座位など最適化
  5. 安全確保 ゆっくり動かす、声かけ、体位変換の頻度配慮
  6. チーム共有 クッション配置や注意事項を見える化

身体のポジショニングは、利用者の安全・快適性・機能維持に欠かせないケアです。同時に、介護職の介助負担軽減につながる重要な技術でもあります。

正しい知識と継続した実践により、利用者の生活の質(QOL)の向上を支えていきましょう。

ABOUT ME
たろ
【資格】理学療法士(15年)、介護職員初任者研修、福祉住環境コーディネーター2級、認知症ライフパートナー 【職歴】大手工場、急性期・回復期病院、デイサービス、老健(非常勤)、訪問リハビリ(非常勤) 【講師実績】イオンにて介護予防の相談会、介護予防対象者向け体操講義、介護福祉士向けの介護講義