理学療法士は病院やデイサービスなどの施設など多くの場所で働いています。
そのひとつに特別養護老人ホーム(以下特養)があります。
特養で勤務する理学療法士は、一体どのような仕事をするのでしょう。
今回は私や友人の経験をもとに、「特養の理学療法士(機能訓練指導員)の仕事」についてご紹介したいと思います。
Contents
特養の理学療法士とは?
理学療法士が特養で勤務する場合、基本的には「機能訓練指導員」として業務を行います。
特養の機能訓練指導員は、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師のいずれかの資格を有する者とされています。
機能訓練指導員が常勤専従で一人以上いれば、個別機能訓練加算(1日12単位)を算定することが出来ます。
特養の機能訓練指導員の仕事とは?
特養の機能訓練指導員は基本的には、一人職場で勤務することが多いです。
個別機能訓練計画書の作成
特養の機能訓練指導員は、個別機能訓練加算を算定している場合が多いのですが、この加算を算定するには個別機能訓練計画書を作成して利用者本人や家族から同意をもらう必要があります。
ただ利用者が100名未満の特養の場合、機能訓練指導員は基本的には一人になるため、この個別機能訓練計画書を多いところでは約100名分を作成しなければならないのです。
計画書の内容は当然他職種と共有して検討・作成していきます。
私が勤務していた特養では、計画書を家族へ送付して同意をもらうところまで機能訓練指導員がおこなっていました。
アセスメントとモニタリングの実施
個別機能訓練を行う上で、アセスメントと定期的なモニタリングは必須になります。
アセスメントとは、「評価」のことです。計画書の作成や訓練を行うにはまず、アセスメントをしなければなりません。
モニタリングとは、「観察」「記録」「再評価」などのことです。
モニタリングをして計画書の見直しが必要な場合には再作成します。
モニタリングは最低でも3か月に1回以上は行う必要があります。
日々の機能訓練の記録
個別機能訓練を実施したら、訓練内容を毎日記録します。
私が勤務していた特養では、訓練内容と実施時間、さらに訓練時の様子などのコメントを記録していました。
介護側で行う日常生活の中での機能訓練(移乗や歩行、体操など)は介護側で毎日記録し、機能訓練指導員が行う機能訓練はそれとは別に記録していました。
個別機能訓練の実施
個別機能訓練といっても、機能訓練指導員が必ず利用者一人一人個別に訓練をしなければならないわけではありません。
約100名の利用者を毎日一人でまわるのは不可能です。
ただ介護側に「この利用者には日常でこの運動を行ってください」と連携をしておく必要があります。
例えば、
- 下肢筋力が低下している利用者にはトイレ誘導の際に出来るだけ手引き歩行をしてもらう
- 寝たきりの利用者には車椅子に座り離床時間をつくってもらう
などです。
基本的には介護側と連携を密にとり、日常生活の中で出来る運動を指導・助言して毎日実施してもらいます。
機能訓練指導員はその中でも特に運動が必要な人をピックアップして毎日訓練を行う場合もありますし、まんべんなく定期的に全員をまわる場合もあります。
私が勤務していた特養では、1日20名を5日(1週間)で約100名全員をまわるスケジュールをとっていました。
機能訓練指導員が行う個別機能訓練の内容は、基本動作や応用動作訓練、ポジショニングやシーティング、体操などが中心でした。
介護士へ技術指導・助言
特養の機能訓練指導員が行う仕事では、ときには介護士へ介護技術の指導や助言を行うことも非常に大切なことです。
介護士に負担のない介護方法、過介護にならず利用者の出来る動作を上手く引き出す介護方法などです。
その中にはポジショニングやシーティングなども入っています。
サービス担当者会議に出席
特養の機能訓練指導員は、サービス担当者会議に出席して利用者の現状や変化、目標などを提案・助言します。
サービス担当者会議とは、
サービス担当者会議は、ケースにかかわるサービス機関が一堂に会する貴重な場であり、チームケアを進めるうえで欠かせないものです。ケアマネジャーはここで、関係者を招集したり、司会進行を行うなどの重要な役割を担います。
出典元:サービス担当者会議|独立行政法人 福祉医療機構 WAM NET(https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/kaigo/caremanager/caremanagerworkguide/caremanagerworkguide_10.html)
機能訓練指導員が必ずしもサービス担当者会議に出席する必要はありませんが、出席しておいたほうが情報共有をしやすいですし、ケアプランと個別機能訓練計画を連携しやすくなります。
車椅子の選定・修理
特養では、車椅子を使用している利用者は多いです。
なかには車椅子が古く壊れかけているものもあります。
車椅子の故障で、特に多いのが下記になります。
- ブレーキが効かない
- タイヤに空気が入っていない
- ネジがゆるんでる
- フットレストがぐらぐら
総務や修繕担当の職員がいれば、その職員に依頼しても良いのですが、車椅子が適合しているか確認するついでに機能訓練指導員が修理するのも良いと思います。
集団体操の実施
特養の機能訓練指導員は、ときには集団体操を実施することもあります。
毎日大人数の利用者の身体を効率良く動かしてもらうには、やはり集団体操が重宝されます。
集団体操が定着すれば、利用者の運動量が増えるだけでなく、施設全体が盛り上がるような感じにもなります。
利用者の気分転換を図る
機能訓練指導員の仕事は、利用者の訓練だけが仕事ではありません。
外に散歩や日光浴をしに行くことも、建物の中にずっといる利用者にとっては新鮮ですし良い気分転換になります。
またコミュニケーションをとって、話を聞いてあげるだけでも利用者にとっては良い気分転換になる場合があります。
これらは定まったスケジュールがない機能訓練指導員だからこそ出来るのです。
おわりに
忙しい現場の職員が多いなか、機能訓練指導員にしか出来ない仕事はたくさんあります。
運動などの訓練だけでなく、利用者の気分転換を図ったり、楽しみを持ってもらうことも機能訓練指導員の役割であると思います。