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運動

片麻痺患者の階段昇降:成功するポイントは?

杖を使った歩き方には3動作歩行や2点1点歩行などがあり、片麻痺患者もこの歩き方が基本となります。

杖の使い方については、下記記事に詳しく記載しています。

T字杖の正しい使い方とは?怪我や病気などで下肢の機能が弱くなったときに、その補助として杖を使用することがあります。 実際、杖を使うことで歩行能力が向上するこ...

片麻痺の場合、杖は非麻痺側(健側)で持ち、

  1. 麻痺側(患側)
  2. 非麻痺側(健側)

の順序で下肢を出していきます。(3動作歩行)

もしくは、

  1. 杖と麻痺側(患側)
  2. 非麻痺側(健側)

の順序で下肢を出していきます。(2点1点歩行)

このように、歩行時には麻痺側の下肢が後ろに残らないようにする必要があります。麻痺側下肢の安定性を高くするために、杖を前に出した後に、もしくは杖と同時に麻痺側下肢を振り出します。

しかし、この下肢を振り出す順序には例外があります。それは階段の昇り降りをするときです。

階段昇降時には、歩行時とは異なる下肢を出す順序となります。

今回は、片麻痺患者が階段昇降動作を行うポイントについてご紹介していきます。

ちなみに麻痺のあるほうが麻痺側、麻痺の無いほうが非麻痺側となります。

片麻痺患者における階段昇降の重要性

日常生活における独立の促進

片麻痺患者が階段を昇降する能力を向上させることは、日常生活における独立を促進するために非常に重要です。階段は多くの家庭や公共の建物で避けられない構造であり、その昇降が可能であることは、個人の行動範囲を大きく広げます。

リハビリを通じて適切な階段昇降方法を学び、日々の生活をより自立的にすることは、片麻痺患者にとっての大きな成功と言えるでしょう。

杖や手すりをうまく活用する技術を身につけることで、より安全に階段を利用することが可能になります。

事故防止のための重要な技術

階段昇降は、片麻痺患者にとってバランスを崩しやすい状況を生み出すことがあり、そのため事故防止のための技術習得が必要不可欠です。

患者が安全に階段を昇り降りするためには、麻痺側の下肢をどのようにサポートするか、手順をしっかりと覚えることが重要です。

特に、降りるときは麻痺側の下肢を先に出す方法を習得することで、転倒のリスクを大幅に軽減することができます。また、介助が必要な場合には、介助者が適切な位置から支援することが求められます。これらの技術は、日常的に練習を重ねることでより自然に行えるようになります。

階段昇降の基本的な手順

階段を安全に昇るためには、片麻痺患者の特性を理解した上で、適切な手順を守ることが重要です。まず、階段昇降の基本として『二足一段』の原則を徹底します。

これは、両足を同じ段に揃えてから次の動作に進むという方法です。不安定さを軽減するために、手すりや杖を利用することも有効です。

昇段時に下肢を出す順序

片麻痺患者が階段を昇る際には、

  1. 非麻痺側(健側)
  2. 麻痺側(患側)

の順序で下肢を出していきます。階段昇降動作は歩行動作よりも難易度が高く、転倒リスクも高くなるので基本的には3動作で行います。

杖の後に非麻痺側下肢を出すことで、後ろに残った麻痺側下肢の支持期(非麻痺側を振り上げるとき)には杖で補助が出来ます。さらにその後、麻痺側下肢を振り上げるときにも杖で補助が出来ます。

また、3動作で階段を昇る際には、先に振り上げた下肢を軸にして体重を前上方に持ち上げる必要があるため、相当な筋力がいります。そのため、非麻痺側下肢から振り上げていきます。

麻痺側下肢から振り上げてしまうと、体重を持ち上げることが出来ずにバランスを崩しやすいです。さらに体重を持ち上げきれずに非麻痺側下肢を振り出すと、つま先が段差に引っ掛かってしまうので大変危険です。

降段時に下肢を出す順序

片麻痺患者が階段を降りる際には、

  1. 麻痺側(患側)
  2. 非麻痺側(健側)

の順序で下肢を出していきます。杖を出した後に、麻痺側下肢、最後に非麻痺側下肢を振り出します。階段昇段時とは下肢を出す順番が反対になります。

階段を降りるときには、後ろに残る下肢に相当な筋力が無いと反対側の下肢を振り出せません。そのため、筋力が十分にある非麻痺側下肢を後ろに残し、麻痺側下肢を先に振り出します。

麻痺側下肢を後ろに残し、非麻痺側下肢を先に振り出してしまうと、バランスを崩したり膝折れが起こりやすく転倒のもとになります。

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麻痺側下肢をサポートする

麻痺側の下肢を階段昇降でサポートするには、重量をかけすぎないよう注意が必要です。麻痺の程度によっては、手すりや杖の使用に加えて、介助者のサポートも有効です。

介助者がいる場合、背後から軽く腰を支えてもらうことで、麻痺側に過度な負担をかけずに動作を行うことができます。

リハビリテーションを通じて筋力を強化し、適切な手順を練習することで、安全性を高めることが可能です。

階段昇降における介助方法

介助の際の安全対策

片麻痺患者が階段昇降を行う際には、安全対策が非常に重要です。階段周辺の障害物を取り除き、十分な照明を確保して、見えやすい環境を提供します。

介助の基本的な位置は、患者が階段を上る場合には斜め後ろに立ち、階段を降りる際には斜め前に股関節を支えるように指導します。この位置取りにより、患者がバランスを崩した際に効果的にサポートできます。

サポートの程度を判断する

片麻痺患者が階段昇降を行う際に必要なサポートの程度を判断するためには、患者の筋力、バランス能力、そして麻痺の程度をしっかりと評価することが大切です。

リハビリテーションの進行状況によっても適切なサポートの量や方法が変わります。例えば、筋力トレーニングを通じて患者の体力が向上した場合、より少ない介助で階段昇降が可能になることが多々あります。

リハビリテーションの重要性

片麻痺患者にとって、階段昇降は日常生活で自立を維持するために重要なスキルです。そのためには、リハビリテーションが欠かせません。

リハビリを通じて、筋力やバランスを向上させるだけでなく、階段昇降の手順を身につけることが求められます。

このセクションでは、片麻痺患者の筋力トレーニングの重要性と、動作の順番を覚えるための練習方法について説明します。

筋力トレーニングの重要性

片麻痺患者が階段を安全に昇降するためには、筋力の強化が重要です。特に患側下肢の筋力を鍛えることが必要です。例えば、片足立ちやスクワットといったエクササイズは、患側の筋力を向上させる効果があります。

また、足首の可動域を広げるためのストレッチも有効です。リハビリの一環として、これらの運動を定期的に取り入れることで、階段昇降時の安定性を高めることができます。

動作の順番を覚えるための練習方法

階段昇降をスムーズに行うためには、動作の順番をしっかりと覚えることが重要です。そのためには、繰り返し練習することで身体に動作を覚えこませる必要があります。

まずは平地で動作をシミュレーションし、その後、実際の階段を使った練習を行います。この過程で、杖や手すりを使用し、バランスを保ちながら麻痺側をサポートする感覚を養います。

練習を重ねることで、階段昇降する際の手順が体に染み付き、自然な流れで動作を行えるようになります。

片麻痺患者のための安全対策

片麻痺患者にとって、階段昇降は日常生活を独立して送るための重要なスキルです。しかしながら、安全性を確保することが第一の目標となります。

このため、階段周辺の環境整備や転倒防止のための装置の活用が欠かせません。

階段周辺の環境整備

まず、階段に滑り止めを設置することで、足を踏み外すリスクを軽減します。また、階段の手すりをしっかりと取り付け、片手でつかむことができるようにします。

さらに、階段全体が良好に照らされていること、そして段差が明確に識別できるように、踏面に目立つ色を塗るなども有効です。

転倒防止のための装置活用

次に、転倒を防止するための装置を積極的に活用します。たとえば、階段昇降リフトの設置は、階段を昇降する際の体力的な負荷を大幅に軽減し、安全に移動する手助けとなります。

また、自動照明を設置することで、夜間や薄暗い時間帯でも足元を確認しやすくし、安心して昇降できる環境を提供します。こ

れらの対策により、介助なしでも可能な限り安全に階段を利用できる環境が整い、患者自身が自信を持ってリハビリに取り組むことができます。

おわりに

片麻痺患者の階段昇降動作は、歩行動作よりも転倒に注意しなければなりません。

昇段時には身体能力の高い下肢(非麻痺側)から、降段時には身体能力の低い下肢(麻痺側)から振り出します。

階段に手すりがついていれば無理をせず、杖ではなく手すりを使用して安全に階段の昇り降りを行いましょう。

効果的な階段昇降のポイントについては、下記記事をご参考ください。

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たろ
【資格】理学療法士(15年)、介護職員初任者研修、福祉住環境コーディネーター2級、認知症ライフパートナー 【職歴】大手工場、急性期・回復期病院、デイサービス、老健(非常勤)、訪問リハビリ(非常勤) 【講師実績】イオンにて介護予防の相談会、介護予防対象者向け体操講義、介護福祉士向けの介護講義
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