医療・福祉の現場では筋力が弱いのに自分で立ち上がろうとして、そのまま転倒してしまう高齢者の方がよくいます。
転倒してしまっては骨折などの大きな怪我に繋がりかねないため、「転倒しないようにするにはどうしたら良いのか」、介護職員をはじめ他職種が集まって意見を出し合います。
ベッドでは四点柵をつけて患者さんが身動き出来ないようにされているケースもありますが、身体拘束ゼロを掲げている施設などでは四点柵が身体拘束にあたるため、四点柵をつけることが出来ません。
身体拘束の三原則とその事例については、下記記事をご参考ください。

かと言って四六時中、介護職員がついて見守りをしているわけにもいきません。ただでさえ人員不足なので、絶対に無理です。
「拘束がダメ」「見守りがダメ」となったときに、転倒への対策として緩衝マットを使用することがあります。
緩衝マットとは?
緩衝マットとは、転倒や衝突などの衝撃から身を守るために緩衝・吸収してくれるマットです。
緩衝マットは床に敷くタイプだけでなく、壁につけるタイプのものもあります。
介護の現場だけでなく、工事現場やスポーツをする場所などでも使われていることがあります。
介護の現場では、とくに床に敷くタイプの緩衝マットが使われています。このマットを敷くことで、万が一転倒したときでも大きな怪我にならないようにしてくれます。
緩衝マットの欠点は?
怪我から身を守ってくれる緩衝マットですが、使い方によっては邪魔になったり、マットを敷いていることでかえって危険になることもあります。
ここでは緩衝マットの欠点をご紹介していきます。
足場が不安定になる
床を歩いているときと違い、緩衝マットの上では身体の重みで足がマットに沈み込むため、足場がやや不安定となります。
大袈裟に言うとマットレスの上を歩くような感じになるので、足腰が弱い方が緩衝マットの上を歩く場合には歩きづらく感じることがあります。
持ち運びが大変
緩衝マットはベッド横に敷くことが一般的ですが、小さすぎては万が一転倒したときに身体がマットからはみ出してしまうため意味がありません。
基本的にはマットの上で人が寝転べるくらいの大きさであることが多いのですが、その分持ち運び時や保管時に手間がかかります。
マットごと滑る
床が滑りやすい材質で尚且つ緩衝マットに滑り止めなどが無い場合、マットの上で立ち上がりや歩行をしようとするとマットごと滑り転倒してしまうことがあります。
マットごと滑ってしまうと、大怪我に繋がりやすく非常に危険です。
マットにつまづく
ベッドに戻る際、緩衝マットを敷いていることに気付かずに、マットの端部分で足がつまづくことがあります。
また、マットを敷いていることを理解していても、筋力が低下している高齢者などは足が上がりきらずにマットの端でつまづいてしまうことがあります。少しの段差でも注意しておかなければなりません。
緩衝マットを検討するならどんなものが良い?
緩衝マットを検討する場合、少しでも欠点が少ないものにしたいところです。
良い緩衝マットでなければ、かえって危なくなります。
沈み込みが少ないものにする
緩衝マットの上は、歩くのには不安定です。
そのため、沈み込みが少ない素材のマットを選ぶことで安定性を増すことが出来ます。
折り畳み式にする
緩衝マットをそのまま持ち運びするのは大変です。
二つ折りなどに折り畳みできるマットであれば、持ち運びが非常に楽になります。
取っ手つきにする
どんなものでも取っ手があるものと無いものでは、持ち運び易さがかなり変わります。
緩衝マットに取っ手がついていれば、持ち運びがさらに楽になります。
滑り止めつきにする
滑り止めがしっかりついている緩衝マットにすることで、マットごと滑ることがなくなるため安全性が上がります。
マットの端が斜め加工のものにする
マットの端が斜め加工であれば、床とマットの段差でのつまづきが減少します。
離床センサーの併用が可能
転倒しても怪我をしないように緩衝マットを敷くことが多いと思いますが、それでも当然まずは転倒しないようにすることが一番大切です。
緩衝マットだけでなく、離床センサーを併用してつけることが出来れば非常に心強くなります。
離床センサーがあるとベッドから起き上がったときにセンサーが働き、コールで知らせてくれます。
まとめ
緩衝マットは、あくまでも転倒したときの衝撃を吸収し怪我の発生をおさえてくれるものです。
転倒自体を予防するものではありません。
転倒からの怪我を無くすためには緩衝マットだけでなく、その他の環境を整えることも十分に検討しなければなりません。