理学療法士になるためには、臨床実習に必ず行かなければなりません。
この理学療法士の臨床実習がとにかく大変でつらいのです。
今回は、私が学生だった頃の約15年前の体験をもとに、「理学療法士の臨床実習でつらさ」をご紹介していきます。
Contents
理学療法士の臨床実習について
理学療法士を目指す学生にとって、臨床実習は非常に重要な教育の一環となります。この実習の目的は、大学や専門学校で学んだ理論を、実際の医療現場での経験を通して実践力に変えることです。学生は病院やリハビリ施設での業務を通じて、患者と直接接する機会を持ちます。これにより、理学療法士として必要な知識や技術を身に付けるだけでなく、作業療法士や看護師など、他の医療職とのチーム連携の重要性も学ぶことができます。短期間ながらも非常に集中した時間を過ごすことで、学生は現場の厳しさや責任感を体感し、多くの気づきを得ることができます。
理学療法士の臨床実習には、必ず臨床実習指導者のPTの先生がつきます。この臨床実習指導者のPTの先生をスーパーバイザー(SV)とも言います。実習生の教育担当というわけです。
スーパーバイザーは臨床経験が3年以上のPTの先生です。(今後は5年以上になるようです。)
基本的にはこのバイザーが受け持っている患者さんや利用者さんの見学や評価、治療を行う場合が多いです。ただ、バイザー以外のPTの先生の受け持っている患者さんや利用者さんが担当になる場合もあります。
基本はバイザーに毎日ついてまわるのですが、バイザーが休みの日や担当の患者さんのリハビリ時間などの兼ね合いから、他のPTの先生についてまわることも多いです。
理学療法士の臨床実習でつらいこと4つ
理学療法士の臨床実習がつらくなるか楽になるかは正直なところ、バイザーによるところもあります。
バイザーがただ厳しいだけはつらい
理学療法士の臨床実習と言えば「つらい」ですが、その原因のほとんどがバイザー次第でもあります。
バイザーが優しくて教え方が上手い先生であれば、実習中の毎日がとても充実し楽しくなります。
反対にバイザーが厳しいだけでしっかりと教えてくれない先生であれば、実習中の毎日は非常に過酷でつらいものとなってしまいます。
私の経験上、バイザーはほとんどが厳しい先生でした。それは実習生として教えて頂くためには当然だと思います。厳しくてもしっかりと指導してもらえれば、必ずあとあとの役に立ちます。
ただ厄介なのが厳しいだけで、しっかりと教えてくれなかったり、理不尽に怒られたり、課題がとにかく多かったり、といったバイザーはつらかったです。
慣れない環境でつらい
実習生はしばしば慣れない環境に身を置くことになるため、強いプレッシャーを感じることが多いです。実習地は養成校によって決定され、自分で選ぶことはほとんどできません。そのため、遠方での実習が決まると、見知らぬ土地での生活に不安や孤独感を抱えることもあります。
実習生の中には遠方での実習を余儀なくされることもあり、環境に慣れるための努力も求められますが、こうした経験が将来役立つことは間違いありません。
毎日の課題がつらい
実習中は毎日帰ってからデイリーノートや評価レポートなどを作成し、翌日朝に提出するのが基本となっています。
デイリーノートには、見学させて頂いた患者さんの事や調べてきた事などを書き、レポートには担当の患者さんの情報・検査・測定・評価・治療など全てを考察して書いていきます。
レポートは多い場合には数十ページにまでなることもあります。さらにただ書くだけでなく、毎日訂正をもらうので書き直しがほぼエンドレスに続きます。
担当の患者さんのレポートに集中したいところですが、デイリーノートも同時に作成しなければなりません。
厳しいバイザーであれば、その日見学した全ての患者さんの動作観察・分析・評価項目・治療プログラム立案までを書かなければならない場合もあるようです。(簡単なようですが実習生の時にはかなり時間がかかります。)
そしてレポートがある程度完成すれば、今度はレジュメを作成しなければならないのです。レジュメはレポートを要約したものです。
睡眠時間が少なくてつらい
理学療法士の臨床実習中には、睡眠時間が減ることが多いです。毎日の課題が多ければ多いほど、寝る時間が無くなる生活が続きます。
私の場合は、実習中の睡眠時間は平均して3~4時間はなんとか確保出来ていましたが、「毎日徹夜だった」という学生もたくさんいました。
睡眠時間が少ないと実習中見学をしているときに、とにかく眠たくなるのも非常につらいです。(立ったまま寝そうになることも)
症例発表がつらい
実習の終盤になってくると、担当になった患者さんの症例発表をPTの先輩方の前でしなければありません。(実習が終わってからは学校で症例発表があります。)
大きな病院などでは、数十人もPTの先生がいるのでかなり緊張します。
さらに質疑応答ではたくさんのご指摘をもらいます。睡眠時間もなく疲労困憊の中、キツイことを言われるとメンタルがやられてしまいそうになることだってあります。
つらい実習を乗り越えるための対策
睡眠と健康管理の重要性
理学療法士の実習は大変で、特に睡眠不足や体調不良になりやすい環境です。実習期間中は、レポート作成や症例担当に伴うプレッシャーから、十分な睡眠が取れずに体調を崩すこともあります。健康管理を怠ると、実習での学びに悪影響を及ぼすことがあるため、しっかりとした睡眠を取ることが不可欠です。また、しっかりとした食事や適度な運動を心がけ、丈夫な身体を保つことで、実習に全力で取り組むことができます。このような健康管理によって実習を乗り越える力が養われ、理学療法士としての大変な実習を勝ち抜くことができるでしょう。
先輩や同僚との交流と支え
実習がきついと感じる理由の一つに、孤独感があります。そのため、先輩や同僚との交流は非常に重要です。先輩からは実習に関する具体的なアドバイスや経験談を得ることができ、同僚とのコミュニケーションを通じて、孤独を和らげることができます。交流を通じて、不安を共有したり、一緒に問題を解決することで、実習をより充実したものにすることができます。また、実習先でのバイザーや職員と良好な関係を築くことも、支援を得るための大切なステップです。同僚との友情は、理学療法士の実習におけるモチベーションを保つ原動力となり得るでしょう。
前向きなメンタルの維持
理学療法士の実習を成功させるためには、前向きなメンタルの維持が必要不可欠です。新しい環境でのストレスや、バイザーからの指導に対する不安を乗り越えるには、メンタルの強さが求められます。日々の勉強を継続し、必要なスキルを蓄えることも、実習の大変さを乗り越えるための重要な要素です。「がんばろう」という気持ちを持ち続けることで、理学療法士としての成長が期待できるのです。また、実習で得られた経験は、将来の仕事やキャリアにおいて大きな自信と支えとなるでしょう。
実習の辛さを乗り越えた後に得られるもの
スキルアップと自信の獲得
理学療法士の実習は、その過酷さで知られていますが、辛さを乗り越えた後には貴重なスキルアップの機会が待っています。実習を通して得た知識や技術は、大学や専門学校で学ぶ理論を実践的に応用する力を養います。特に臨床現場で多様な症例に触れることで、理学療法士としての洞察力や判断力が大きく向上します。そして何より、現場での成功体験が自信に繋がり、将来の仕事に対してポジティブな意識を持つことができるようになります。このような経験は、看護師や作業療法士といった他の医療専門職との連携にも役立ち、幅広い視点から患者をサポートする力を育むのです。
患者とのコミュニケーション力の向上
実習期間中、学生は多くの患者と接する機会を得るため、自然とコミュニケーション力が磨かれます。患者の状況や症状を的確に把握し、適切な治療方針を説明することは容易ではありません。しかし、実習の場は実際に患者との対話を通じて信頼関係を築く絶好のチャンスです。言葉だけでなく、表情やジェスチャーを通じて思いやりを伝えることは、重要なスキルです。こうした経験を積むことで、単に技術を提供するだけではなく、患者の心に寄り添う理学療法士へ成長することができます。実習を経て、現場でのコミュニケーションの大切さを実感し、その後のキャリアに活かしていくことは非常に価値のあるものと言えます。
実習を終えた理学療法士の感想
体験談1: 初めての臨床実習で学んだこと
初めての臨床実習では、理学療法士の仕事がどれほど大変であるかを実感しました。病院での実習は毎日が新しい発見で溢れていましたが、特に印象に残っているのは患者さんとのコミュニケーションの重要性です。患者さんの表情や言葉から痛みや不安を読み取る力が求められ、「勉強だけでは得られないものがある」と感じました。実習を通じて、現場でこそ学べる技術や態度が多数あることを実感し、理学療法士として成長するための貴重な体験となりました。
体験談2: 挫折と成長の瞬間
私にとって、実習は多くの挫折を経験する場でもありました。特に実習の初期段階では、自分のスキル不足や知識の欠如を痛感し、「きつい」と感じることが多々ありました。しかし、そんなときこそ、バイザーや同僚からのフィードバックが成長のきっかけとなりました。誤った判断をして叱られることもありましたが、そのたびに学び直すことで理解が深まり、少しずつ自信を持てるようになりました。このプロセスを通じて、挫折を糧に成長することの大切さを学びました。
体験談3: バイザーとの良好な関係の築き方
実習の成功には、バイザーとの信頼関係が欠かせません。最初はバイザーの指導を受けるのに緊張しましたが、簡単な質問や疑問を積極的に投げかけることで、理解を深めることができました。また、バイザーが提供するフィードバックは時に厳しいものでしたが、それを素直に受け入れ、改善に努める姿勢を持つことが関係構築につながりました。結果的に、良好な関係が築けたおかげで実習は充実したものとなり、理学療法士としての基盤ができたと感じています。
おわりに
理学療法士の臨床実習は「つらいこと」で有名です。しかし、このつらさは実習先やバイザーによります。
私も実習ではつらかった思い出のほうが多く、もう二度と実習には行きたくないのが本音です。しかし、今考えると実習で得たものは非常に多く、良い経験が出来たので結果的には実習に行って良かったと思います。
「バイザーは優しい人がいいな」と誰しもが考えてしまいます。しかし、実習中にたくさん指導してくれる厳しいバイザーに当たって苦労するほうが、実際に免許を取得して臨床に出たときに役立ちその苦労が報われるような気がします。