介護やリハビリを行うときには、自分たちの手の握り方が非常に大切になってきます。
握り方ひとつで相手に不快に思われるか、心地よいと思われるか、相手との信頼関係が変わる場合もあります。
悪い握り方をすると、痛みの誘発や筋緊張の亢進にもなりかねません。
負担のない心地よい触り方(握り方)
皮膚や血管が弱い高齢者の方をはじめ、患者さんや利用者さんの身体に触れるときには出来るだけ負担のない触り方で接する必要があります。
患者さんや利用者さんの介護やリハビリを行うときに、ついつい握る力が入ってしまうことがあり、そうなってしまうと腕や足などに内出血や剥離などをする事故になりかねません。
患者さんや利用者さんに負担のない心地よい触り方として、今回は「虫様筋握り」と「第4・5指握り」についてご紹介していきます。
虫様筋握りとは?
虫様筋握りとは、その名前の通り
虫様筋を意識した握り方です。
・虫様筋とは、
第2〜5指(母指以外の4つの指)のMP関節の屈曲(曲げる)とDIP・PIP関節の伸展(伸ばす)に作用している筋肉です。
・MP関節とは、
中手指節関節(metacarpophalangeal joint)の略語です。
MP関節は指のつけ根の関節です。
・PIP関節とは、
近位指節間関節(proximal interphalangeal joint)の略語です。
PIP関節は指の第2関節です。
・DIP関節とは、
遠位指節間関節(distal interphalangeal joint)の略語です。
DIP関節は指の第1関節です。
虫様筋を作用させると、手が『Γ』の形になります。
そこに母指を前へ出すと、手が『⊂』の形になります。
この『⊂』の形の握り方が虫様筋握りになります。
虫様筋握りのメリットは握ったときに、
- 「点」ではなく「面」で接触する
- 接触範囲が増加する
- 必要以上に力が入り過ぎない
が挙げられます。
広い面で接触することで指の圧が分散され、手全体で握るような感じになり心地よい握り方となります。
『⊂』ではなく『C』の形であれば、「面」ではなく指の先端の「点」での接触になりやすく部分的に圧がかかりやすくなっしまいます。
第4・5指握りとは?
人間の手の握る力は、普通に握れば母指・第2指(人差し指)・第3指(中指)の3本の指の力が発揮しやすいです。
そのため5本の指で握っていても、無意識に母指・第2指・第3指からの圧力が加わりやすくなってしまいます。
2本の指で握られるよりも3本、3本よりも4本、4本よりも5本の指で握られるほうが「面」で押されてる感覚があり心地よいです。
そのため、5本の指からの圧力を出来る限り均等にします。
方法としては、「第4・第5指に意識して力を入れて握る」です。
握る力の9割くらいを第4・第5指の2本の指に意識して、残りの1割くらいを母指・第2指・第3指の3本の指に力を入れて握ることで圧力が均等になりやすいです。
おわりに
介護やリハビリをするうえで、患者さんや利用者さんへの触り方(握り方)はとても大事なことです。
今回ご紹介した「虫様筋握り」と「第4・5指握り」の2つの方法を合わせて行うことで、より負担のない心地よい握り方となります。
しかしこれらの握り方は簡単なようで意外に難しく、慣れるまでは大変です。
まずは健常者同士で、「握られた感覚を相手に伝える(伝えてもらう)」という体験をすることが大切です。