車椅子が合っていないと姿勢が崩れ動作が行いにくくなるだけでなく、部分的に体圧がかかり褥瘡や拘縮が発生してしまう可能性が高くなります。
そのため、車いすの適合判定はとても大切です。
車椅子の種類については下記記事をご参考ください。

はじめに
車椅子は、移動の補助を必要とする方にとって不可欠な道具です。しかし、快適かつ安全に利用するためには、その調整が非常に重要です。
例えば、座角を調節するティルト機能や、背角を調節するリクライニング機能は、座位保持や除圧に役立ちます。これらの機能を含む適合判定基準は、利用者が日常生活をより質の高いものとするために欠かせません。
この記事では、車椅子の調整方法や基準について紹介しながら、そのフィット感を高めるためのポイントについて詳しく説明していきます。
適切な調整によって、快適な座位を実現し、安全で効率的な移動が可能となります。それに伴って、車椅子の正しい使用方法や重要な点検項目についても触れていきます。
また、車椅子利用者に最適な選択をすることは、使用者自身の快適性のみならず、安全性をも確保します。これには、適切なサイズや高さ、車椅子のハンドルやブレーキの調整が含まれます。こうした要素を総合的に考慮し、適切なシーティングが提供されることが求められます。
シーティングについては下記記事をご参考ください。

車椅子の基本構造と調整基準
車椅子の各部位の名称と役割
車椅子は、快適に座ること、安全・安心して移乗できること、楽に移動できることを主な目的として設計されています。
そのために、さまざまな部位がそれぞれの役割を果たしています。一般的に、車椅子はシート、バックサポート、フットレスト、タイヤ、ブレーキ、ハンドルなどで構成されています。
シートは使用者が快適に座るための部分で、バックサポートは姿勢を保持し、背中を支える役割を果たします。
フットレストは足を休めるためのもので、適切な高さに調整することができます。タイヤは車椅子の移動を可能にし、自走式の場合は使用者自身が駆動しますが、介助用車椅子の場合は介助者が操作します。
ブレーキは安全性を確保するための重要な部位であり、特に急な斜面や停止時に効果を発揮します。ハンドルは介助者が車椅子を押しやすくするためのもので、適切な位置にあることが必要です。
車椅子の各部位の名称については下記記事をご参考ください。

座位保持装置の調整基準
座位保持装置は、車椅子において利用者が安定した姿勢を保持するために非常に重要です。座角調節(ティルト)や背角調節(リクライニング)は典型的な調整機能であり、それぞれの利用者のニーズに応じて調整することが求められます。
座角調節は、介助者が操作することで座位の傾きを変えることができ、体圧の除圧や姿勢の安定を図ります。リクライニングは背もたれの角度を調整する機能で、長時間の座位保持において、背中やお尻の痛みを軽減し、安楽な姿勢を提供します。
これらの調整には、使用者の体格や生活シーンに応じて高さやサイズを適切に選定し、正確に調整することが求められます。
また、調整基準としては、使用者の身体に適した位置で固定されているか、移動中にずれたり、圧迫感がないかなどをチェックリストを用いて点検することが望ましいです。
このように、車椅子の各部位の調整基準を理解し、適切に調整することで、車椅子のフィット感を向上させ、使用者にとって最適なシーティングを提供することが可能となります。

フィット感の評価方法
利用者の身体に合った調整法
車椅子のフィット感を向上させるためには、利用者の身体に合った調整法が欠かせません。特に、車椅子の高さやサイズ調整を正確に行うことが重要です。
シーティングは、座面の安定性と快適さを確保するための中心的な役割を果たします。座位保持を強化するためには、ティルトやリクライニング機能を活用することも考慮すると良いでしょう。
これらの調整は、身体の重みを適切に分散させ、皮膚への圧力を軽減することができます。さらに、ブレーキやタイヤの調整も安全性を高めますので、適切な点検を行うことが大切です。
評価基準の詳細とチェックポイント
車椅子のフィット感を評価する際には、いくつかの基準とチェックポイントを考慮します。まず、座位の正しい支持が得られているかを確認し、次に駆動やハンドルの操作性も評価対象となります。
フィット感の判定には、チェックリストを活用することが効果的です。具体的には、座面の高さ、背もたれの角度、肘掛けの位置、ブレーキの効き具合、タイヤの状態、そしてリクライニングがスムーズに機能するかを確認します。
さらに、各調整が利用者の体圧分散や安楽な姿勢維持に寄与しているかを観察することも重要です。このような評価を行うことで、より安全かつ快適な移動を提供可能となります。
車椅子調整における判定法
臨床的判断基準
車椅子の調整における臨床的判断基準は、利用者の身体状況や生活スタイルをしっかりと考慮に入れて行われます。特に、車椅子の高さや座位の安定性は重要な調整ポイントです。
座面の高さが適切でないと、足の支えが不十分になり、姿勢に悪影響を及ぼす可能性があります。また、車椅子の幅や幅などのサイズが身体に合っているかどうかも、快適性や安全性に直結します。
こうした調整は、専門的な知識を持つ理学療法士や作業療法士などによって、シーティングの各ポイントに基づいて行われます。具体的には、座面や背もたれの角度調整、肘掛けや足台の高さ、さらには車椅子の駆動方法の選定などが含まれます。
車椅子の検査とメンテナンス方法
車椅子の点検とメンテナンスは、使用者の安全を確保し、快適な使用感を維持するために必須です。まず、タイヤの空気圧やトレッドの状態を定期的にチェックすることが重要です。
タイヤの摩耗や空気圧の不備は、駆動力を低下させ、障害物に対する感度を落とす原因となります。また、ブレーキの利きが悪くなっている場合も、迅速に調整する必要があります。
さらに、ハンドルやリクライニング機構の動作確認は、日常的に行うべき重要ポイントです。これらの機構が正常に機能していないと、快適性を大幅に損ねてしまう可能性があります。
特にリクライニングやティルト機能は、操作の際に異音がしたり、スムーズに動かない場合は、すぐに専門家に点検を依頼するべきです。
また、シートや他の付属品の取り付け状態も緩んでいないか、定期的なチェックリストに基づいて確認を行うことが必要です。
車椅子の適合基準(合わせ方)は?
車椅子がその人に「合っているか」を確認することは重要です。
車椅子の種類によって多少異なりますが、車椅子にはいくつかの適合基準があります。
具体的な調整方法については下記記事をご参考ください。

シート(座面)の幅
シートの幅は、介助用車椅子と自走式車椅子で適合基準が異なります。
介助用車椅子の場合は、対象者の腰幅(座位臀幅)より4~5cm(左右に2~2.5cmの隙間)程度広いものが良いとされています。
一方、自走式車椅子の場合はハンドリム(タイヤ横の握りて)を握ってこぎやすいように、対象者の腰幅より3~4cm(左右に1.5~2cmの隙間)程度広いものが良いとされています。
座位臀幅とは、臀部の最も幅が広い箇所です。
シートの幅が広すぎると姿勢崩れの原因になりますし、シートの幅が狭すぎると臀部や大腿部が圧迫されてしまいます。
またシートの幅が狭すぎると、移乗介助時の接触や巻き込みなどの事故が起こりやすくなります。
シート(座面)の奥行き
シートの奥行きは、座底長より5~7cm程度短いものが良いとされています。
また介助用車椅子の場合はシートの前から膝窩までの距離を3cm程度とし、足こぎ操作をする方の場合は下肢を動かしやすいように、その距離を若干長くしておきます。
座底長とは、臀部後端から膝窩までの長さです。
シートの奥行きが長すぎると臀部とバックレストの間に隙間が出来てしまい、仙骨座りやずり落ちの原因にもなります。
シートの奥行きが短かすぎてもずり落ちの危険がありますし、大腿部の接触面が少なくなるため臀部への体圧が増えてしまいます。
シート(座面)の高さ
シートの高さは、座位下腿長より5cm程度高いものが良いとされています。
座位下腿長とは、足底から膝窩までの長さです。
足こぎ操作をする方の場合は、シートの高さを通常よりも若干低く設定しておきます。
シートが低すぎると仙骨座りやずり落ちの原因になるだけでなく、立ち上がり動作がしにくくなってしまいます。
バックレスト(背もたれ)の高さ
バックレストの高さは、座位腋窩高より7~10cm程度低いものが良いとされています。
座位腋窩高とは、座面から腋窩までの長さです。
自走式車椅子の場合は、上肢(肩)の動きを制限しないようにバックレストを肩甲骨下角より若干低く設定しておきます。
アームレスト(肘置き台)の高さ
アームレストの高さは、座位肘頭高より2~3cm程度高いものが良いとされています。
座位肘頭高とは、座面から肘までの長さです。
アームレストの位置が高すぎると、肘を置いたときに肩が挙上して窮屈な姿勢になります。また、自走式車椅子の場合、ハンドリムを操作しにくくなってしまいます。
反対にアームレストの位置が低すぎると、肘を置くために前傾姿勢になりやすく体幹の傾斜が起こりやすくなってしまいます。
フットレスト(足置き台)の高さ
フットレストの高さは、座位下腿長に合わせます。
また、大腿部後面とシートとの間に隙間があきすぎていないか、大腿部後面が圧迫されていないかを確認します。
さらに、フットレストから床面までの距離は5cm以上あると良いです。
フットレストの位置が高すぎると膝は必要以上に曲がり、大腿部後面の隙間は大きくなり臀部への体圧が増えてしまいます。
フットレストの位置が低すぎると足底が接地せず、大腿部後面への体圧が増えてしまいます。
車椅子適合の実践事例
成功事例の紹介
車椅子の適合が成功した事例として、多くの利用者が指摘するのが、フィット感の向上による日常生活の質の向上です。
ある高齢者施設では、個々の利用者の身体サイズや体力に応じた車椅子の調整方法を実施しました。特に、利用者の体圧を効率的に分散させるリクライニング機能を効果的に活用し、座位の安定性を確保しました。
これにより、長時間の座位保持が可能になり、疲労が軽減されました。また、フィット感の向上により、移動時の不快感も減少し、利用者自身の自走意欲が高まりました。
このように、車椅子の調整基準に基づいた適切な施策が、利用者の日常生活活動をサポートする上で非常に重要であることがわかります。
一般的な課題とその克服方法
車椅子の適合において、一般的な課題として多く見受けられるのが、利用者の身体にきちんと合わせることの難しさです。特に、車椅子の座面の高さや幅、シーティングのフィット感が不十分であると、座位保持に困難を伴います。
解決策として、まずは利用者の身体状況を正確に把握し、それに基づいた調整を行うことが重要です。具体的には、適合基準を参考に調整していきます。
これらの調整によって、利用者が快適に座れるようになり、長時間の使用にも耐えうる車椅子の適合が実現します。
また、定期的な車椅子のメンテナンスと点検が安全と快適さの維持に欠かせない要素となります。
おわりに
車椅子の適合・選定で、その対象者の姿勢だけでなく、ADLやQOLまで変わってきます。
そのため車椅子の適合・選定はとても重要です。
しかし、多くの病院や施設では車椅子の種類や数が限られており、対象者に最も適した車椅子に座ってもらうことが困難なケースがよくあります。
そして古くからある通常タイプの車椅子では調節出来るところが少ないため、クッションなどを使用したシーティングが非常に大切になってきます。
