怪我や病気などで、寝ているときに身体を自分で思うように動かせない人にはポジショニングを行うことが大切です。
そのような人には寝ているときだけでなく、椅子や車椅子に座っているときにもポジショニングを行わなければならない場合があります。
シーティングとは?
介護の現場で働いていれば、「シーティング」という言葉を耳にすることがあります。
シーティングはポジショニングと同様に、とても大事な介護でもあるので覚えておきたいところです。
シーティングとは、椅子・車椅子を利用して生活する人を対象に、座位に関する評価と対応(機器の選定、調整、マネジメントなどを含む)を行うことです。
出典元:シーティングとは|日本シーティング・コンサルタント協会
対象者にもよりますがシーティングを行い、良肢位を保持することで、
- 姿勢・動作の改善
- 褥瘡・拘縮の予防
- 転倒・転落の予防
- 心肺機能や呼吸機能の改善
- 痛みの緩和
など様々な効果が得られる可能性があります。
シーティングの進め方は?
「シーティングをどのように行うのか」というところですが、これはポジショニングを行うときと同様の進め方になります。
シーティングを行うには、まず先に評価をしなければなりません。
- 対象者が椅子や車椅子に座る前に評価をしておき、ある程度予測を立てておく。
- 実際に、対象者に椅子や車椅子へ座ってもらい評価をする。
「座る前にある程度予測を立てる」というのは、例えば円背の人の場合、通常の椅子や車椅子に座ると、
- 体が前かがみにならないか
- 顔を上げにくくならないか
- 背中の突出部が背面に当たって痛くならないか
- 背中や仙骨に褥瘡が出来ないか
- ご飯が食べにくくならないか
- 胸やお腹が圧迫されてしんどくならないか
- 骨盤が前に滑らないか
など、他にもたくさんのことを予測することが出来ます。
当然、円背でも疾患や身長・体重など、その人によって状態が全く異なるので、情報収集や問診・視診・触診などで評価をしておく必要があります。
このようにある程度予測を立てて福祉用具など必要物品を揃えてから、次に実際に対象者に椅子や車椅子へ座ってもらい再度評価をするとシーティングを進めやすくなります。
シーティングが必要なよくある不良肢位とは?
介護・医療の現場でよく見かける車椅子の不良肢位、つまり実際にシーティングが必要とされる座り方をご紹介します。
フットレスト(足置き)の位置が合っていない
フットレストの位置が合っていないことで起こるよくある不良肢位になります。
- フットレストが低すぎて足底が接地せずに浮いてしまっている
- フットレストが高すぎて下肢が曲がりすぎている
- 左右のフットレストの高さが違うため体幹が傾いている
アームレスト(腕置き)の位置が合っていない
アームレストの位置が合っていないことで起こるよくある不良肢位になります。
- アームレストが低すぎて肘を置けない
- アームレストが高すぎて肩が上がっている
- 左右のアームレストの高さが違うため体幹が傾いている
シート(座面)が固い
シートが固いことで起こるよくある不良肢位になります。
- 長時間座ることによる骨盤のズレ
- 長時間座ることによる体幹の傾き
もともと車椅子は移動用であるため、シートは長時間座る用には作られていません。
バックレスト(背面)が固い
バックレストが固いことで起こるよくある不良肢位になります。
- 円背の人にとっては特に背中が痛い
- 体幹が前傾する
おわりに
車椅子の不良肢位は他にもたくさんありますが、特にしっかり調節をして評価をしておきたいところは、バックレスト・アームレスト・シート・フットレストです。
これらパーツには車椅子に座る人が実際に接触して体重をのせる部分であるからです。
そのため、これらのパーツのどれかひとつでも適合していなければ、不良肢位へとなってしまう可能性が高くなります。